今日インプラント治療は、もはや「特殊な治療」ではなく、歯科治療のオプションの一つとして確立するに至りました。最近、インプラント治療に関する情報がマスコミなどで報じられておりますが、インプラントの失敗が強調されているきらいがありインプラントの良い面が正しく情報提供されていないようです。当院でインプラント治療を希望される患者さんでもインプラントに恐怖感を抱いておられる方が増えています。
これは歯科医師がインプラントの適応症の選択を誤ったり、適切な残存歯の処理、外科術式、補綴物の設計、メインテナンスが行われていないことによるインプラント治療の失敗が少なからずあるためだと思われます。しかし、正しくインプラント治療が行われれば失われた天然歯と類似のものが再現されるわけですから患者さんにとってこれほど画期的な治療はないはずです。
■ インプラントの構造
■ 素材の安全性
インプラントの素材は、チタンで形成されています。40年以上の臨床研究により、チタンという素材が人体に拒絶反応を与えず、時間を経過することで、骨と結合する(オッセオインテグレーション)ことが確認されております。このチタンの特性を利用し、人工的に歯の土台である歯根を造り、人工的な歯を立てることで、丈夫で安定した治療を施すことができるのです。 また、インプラント治療で使用するチタンは金属アレルギーの報告が最も少ないので、安心して治療を受けていただくことができます。
電子顕微鏡で見た酸化チタンの表面
正しい治療を行っていくために重要なことは適応・非適応の振り分けと患者さんに対する説明や情報提供であります。現実問題としてインプラント治療が必要な患者さんの口腔内は欠損部以外の部位に多くの歯科治療(歯周病、虫歯、咬合)が必要なことが多いことが挙げられます。そもそも天然歯というものは虫歯や歯周病に対してかなりの抵抗力を持っています。その強固な天然歯ですら喪失してしまうような環境で単純にインプラントという代替治療を行ったとしても早晩失敗という結果に至ってしまっても仕方がありません。
従って当院ではまず患者さんに、どういう過程で歯が無くなっていくのか、歯を残すためにはどうしたらよいかをよく理解していただいてから治療を開始することを原則としております。人工物であるインプラントにすれば放って置いても大丈夫だと考えている人が多いのではないかと思いますが、インプラントに対しては天然歯と同じ、あるいはそれ以上のメンテナンスが必要なわけですから、なぜ抜歯しなければならなかったのか、なぜこのような状態になったのかを知り以下の二点について認識していただきたいと考えております。
また、総合的な治療計画を立案していく上では「戦略的抜歯」という選択肢が存在することも忘れてはなりません。これは長くとも1~2年しか持たないような歯牙に対し、少し先を読み種々の意味で患者さんの負担が少なくなる場合に行う抜歯であり、単純にインプラントの方が良いということではありませんが一つの口腔内を長期的な観点で診た場合、インプラントの方が力学的に有利であることも多いため選択されることもあります。
インプラント治療をするうえで
認識して頂きたいこと
メンテナンスフリーでは無いことの認識
インプラントを長持ちさせるためには天然歯を残すのと同じ努力が必要であること。
あくまでも治療の一選択肢であることの認識
欠損部にインプラントを入れてどうこうと言う事ではなくまず今なら残せる歯をいかに保存していくかということを考え、その中でインプラントがその目的を達成するための一つの治療法として存在するということ。