子供の矯正 ~前歯の歯並び~
小児矯正、Ⅰ期治療、咬合誘導、咬合育成など呼び方や定義は別として大切な我が子の歯並びや咬み合わせを小さなうちに治しておきたいと思うのは親心でしょう。もちろん大人になってからの矯正治療でも現在の成人矯正は一昔前とは異なり様々な手法や装置が登場していて選択肢も広がっていますから、それはそれで一つの考え方であると思います。
では全て生え変わる前の小児期に矯正治療なるものを行う意義は何なのでしょう?今回は保護者様の注目が集まりやすい「前歯の歯並び」についてお話しします。
実は「前歯をキレイに並べる」ことを第一目標としている歯科医師はほとんどいないんです。小児期の矯正治療は成人と比較して子供の成長という不確定要素を多く含んでいます。だからこそ事前の検査で遺伝的な要素が無いかをヒアリングさせていただくのです。
また歯根(歯の根っこ)が未完成で短いうちに無理に歯牙移動させると明らかに短くなったり内部の神経に影響を及ぼしたりといった問題も発生してきます。
歯科医師の目線は「前歯の歯並び」よりも6歳臼歯の位置だったり顎の幅だったり、顎の上下関係(出っ歯や受け口など)だったりと、おそらく保護者様の目線とは異なる部分に向けられています。もちろん保護者様の気になる部分に対しては多分に配慮が必要ですが、本質的な問題は前歯以外の部分に存在しておりその結果として前歯が乱れている訳です。
従って特に5~10歳頃に治療をスタートするお子様に関しては前歯の細かな並びを整える事よりも、将来的に回復が難しくなる大きな問題をできるだけ解決しておく事に主眼が置かれます。その問題を解決した結果、前歯が安定して整列していれば御の字ですし問題が大きすぎて解決がしきれなかった場合にはⅡ期治療に突入することになります。とにかく前歯だけを並べて、それが乱れないようガチガチに固定しておくだけであれば子供のうちに治療介入した意味は半減してしまうでしょう。
なんだかノロノロと治療が進まないしせっかく矯正治療を始めたのに目的が不明な装置を使用していて不安を感じている保護者様は改めてかかっているクリニックの先生に確認してみると良いかもしれません。必ず何かしらの理由があるはずで、それを理解できれば前向きに治療に取り組めるはずです。
もちろん我々歯科医師側もそのような不安を抱かせないように事前の説明を怠ることなくご説明しなくてはなりませんが、全ての情報をお伝えするにはボリュームが多すぎて逆に患者様の理解不足を招いてしまう可能性もあり難しいところでもあります。
言うまでもありませんが信頼関係が無いと子供の矯正治療はなかなか思うように進みません。簡単にチョロっと通院すれば治るケースは稀ですので、もし途中経過が保護者様の想定していた内容と違う場合には遠慮なく確認をしてみてください。
ほとんどの先生は真摯に対応してくれるはずです。
他のブログ記事